Contents
平成27年9月に航空法の一部が改正され、平成27年12月10日から、ドローンやラジコン機等の無人航空機の飛行ルールが新たに導入されました。この法改正により、対象となる無人航空機は「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって、構造上、人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操作により飛行させることができるもの(機体本体とバッテリーの重量合わせて200g未満の重量のものを除く)」です。いわゆるドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等が該当します。
航空法では、(A)空港等の周辺の上空の空域、(B)150m以上の高さの空域、(C)人口集中地区の上空を規制対象とし、これらの空域でドローンを飛行させる場合には、国土交通大臣の許可を要する、と定められています。
航空法では、飛行方法について規制が定められており、「例外なく禁止・遵守が求められる規制」と「国土交通大臣の承認があれば例外的に許容される規制」に分けられます。
例外なく禁止・遵守が求められる規制
①飲酒時の飛行禁止 (航空法第132条の2 第1項第1号)
②飛行前点検の遵守 (航空法第132条の2 第1項第2号/航空法施行規則第236条の4)
③衝突予防の遵守 (航空法第132条の2 第1項第3号/航空法施行規則第236条の5)
④危険な飛行の禁止 (航空法第132条の2 第1項第4号)
以上の4つの飛行方法については、国土交通大臣の承認の対象ではなく、無人航空機の全ての飛行に関して禁止・遵守が求められます。
国土交通大臣の承認を要する規制
以下、1.1~1.6の6つの飛行方法については、国土交通大臣の承認を受けることができれば、例外的に許容されます。では、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
日の出前、日没後において、無人航空機を飛行(夜間飛行)させるためには、国土交通大臣の承認が必要となります。
「無人航空機の位置・姿勢、周囲の障害物等の把握が困難となり、無人航空機の適切な制御が難しい夜間飛行を制限し、航空機の安全並びに地上及び水上の人および物件の安全を図る」ため、規制されています。(根拠法:航空法第132条の2 第1項第5号)
なお、違反した場合の罰則は、50万円以下の罰金となっています。また、ここでいう日の出および日没後とは、国立天文台が発表する「日の出」および「日の入り」時刻となるため、地域に応じて異なります。
目視による、常時監視をできない環境で、無人航空機を飛行させるためには、国土交通大臣の承認が必要となります。
「無人航空機の位置・姿勢、周囲の状況(人や障害物の有無)について目視による常時監視を義務付けることで、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人および物件の安全を図る」ため規制されています。(根拠法:航空法第132条の2 第1項第6号)
なお、違反した場合の罰則は、50万円以下の罰金となっています。また、「目視」とは、無人航空機を飛行させる者が、自分の目で見ることを意味します。操縦者のメガネやコンタクトレンズの着用は「目視」に含まれますが、補助者による監視および双眼鏡・モニターによる監視は視野が限定されるため「目視」には含まれません。
(関係者以外の)人または、(関係者が所有または管理するもの以外の)物件と30m未満の距離で無人航空機を飛行させるためには、国土交通大臣の承認が必要となります。
「飛行させる無人航空機と、人・物件の間に一定の距離を保つことで、無人航空機と人または物件の衝突を予防し、無人航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人および物件の安全を確保する」ため規制されています。(根拠法:航空法第132条の2 第1項第7号/航空法施行規則第236条の6)
なお、違反した場合の罰則は、50万円以下の罰金となっています。
イベント等、「多数の者の集合する催し(特定の場所や日時に開始される多数の者の集まる催しを指し、自然発生的なものは含まない)」が行われている場所の上空で無人航空機を飛行させるためには、国土交通大臣の承認が必要となります。
「多数の者の集合する催しが行われている場所へ無人航空機が落下すれば人に危害を及ぼす蓋然性が高いため、当該場所の上空における飛行を禁じ、地上及び水上の人および物件の安全を図る」ため規制されています。(根拠法:航空法第132条の2 第1項第8号)
原則として、イベントが行われる予定会場の開場時から閉場時までが規制対象となります。なお、違反した場合の罰則は、50万円以下の罰金となっています。
無人航空機を用いて危険物を輸送するためには、国土交通大臣の承認が必要となります。輸送が禁止される「危険物」とは、「爆発性および易燃性を有する物件その他 人に危害を与え、又は他の物件を損壊する恐れのある物件で、国土交通省令で定めるもの」を指します。
「火薬類、高圧ガス、毒物類を輸送する無人航空機の墜落や、これらの物質の漏出、飛散を予防し、無人航空機の航行の安全並びに地上および水上の人および物件の安全を確保する」ため規制されています。(根拠法:航空法第132条の2 第1項第9号)
なお、当該無人航空機の飛行に必要不可欠であり、飛行中、常に機体と一体となって輸送されるなどの物件は上記「危険物」にあたらないもの、とされています。具体的には、「無人航空機の飛行のために必要な燃料や電池」「業務用機器(カメラ等)に用いられる電池」「安全装置としてのパラシュートを開傘するために必要な火薬類や高圧ガス」が該当します。
なお、違反した場合の罰則は、50万円以下の罰金となっています。
飛行中の無人航空機から物件を投下するためには、国土交通大臣の承認が必要となります。水や農薬など、霧状のものを散布する行為も、「物件投下」に該当しますが、計測機器等を設置する行為は「物件投下」には該当しません。
物件投下の際に、無人航空機の下にいる人への危害を予防するとともに、物件投下による機体のバランス喪失による制御不能を防ぎ、無人航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人および物件の安全を確保する」ため、規制されています。(根拠法:航空法第132条の2 第1項第10号)
なお、違反した場合の罰則は、50万円以下の罰金となっています。
以上のように、飛行禁止区域外の場所でも、申請が必要な条件が規定されています。詳しくは、国土交通省が運営する、航空法や飛行ルールの確認、オンライン飛行申請が可能なサイト「ドローン情報基盤システム(DIPS)」でチェックするようにしましょう。
上記1.1~1.6の、国土交通大臣の承認を要する規制については、機体・操縦者・安全確保体制に関する「一般基準」に加えて「追加基準」が定められていますので、注意するようにしましょう。
なお、一般基準とは、空港等の周辺の空域における無人航空機の飛行に関して国土交通大臣の許可を受けるために備えるべき基準のことで、「機体の機能及び性能に関する規制」「飛行させる者の飛行経歴・知識・技能に関する規制」「安全確保体制に関する規制」の3つがあります。これに加えて必要な追加基準は、1.1~1.6の各項目に応じて定められています。
「航空法」以外にも、ドローンに関わる様々な法令やルールが規定されています。国土交通省以外にも、申請や承諾が必要な場合があるので、飛行する場所の管理者や管理会社に確認しておきましょう。ドローンを飛行させる際、特にチェックしておきたい法律を詳しく見ていきましょう。
国の重要施設等(国会議事堂・主要官庁・最高裁判所・皇居・政党事務所・防衛関係施設・原子力発電所等)の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行は、原則として禁止されています。但し、管理者等の同意または公務に基づく飛行で、予め「都道府県公安委員会」へ通報された場合は、この限りではありません。また、200g未満のラジコン・マルチコプターも規制対象となります。
「国政の中枢機能等の維持・良好な国際関係の維持・我が国を防衛する基盤の維持・国民生活及び経済活動の基盤の維持・公共の安全の確保」のため、規制されています。(根拠法:重要施設の周辺上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律/略称:小型無人機等飛行禁止法 第10条第1項)
なお、違反した場合の罰則は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
ドローンを含む、電波を発する無線設備を使用するためには、原則として総務大臣の無線局免許や登録を受け、無線局を開設する必要があります。但し、他の無線通信を妨害しないよう、周波数や一定の無線設備の技術基準に適合する小電力の無線局などは、免許や登録を受ける必要はありません。
「電波の公平かつ能率的な利用の確保」のため、規制されています。(根拠法:電波法 第4条1項)
ドローン等に用いられている無線設備が、「発射する電波が極めて微弱な無線局」や「一定の技術的条件に適合する無線設備を使用する小電力無線局」に該当する場合には、無線局の免許及び登録が不要となります。
微弱無線局とは 発射する電波が極めて微弱な無線設備で、総務省令で定めるものをいいます。主に、産業用の農薬散布ラジコンヘリ等で用いられています。なお、公正な試験が行われ、微弱無線設備の技術基準に適合していると認められた機器には「微弱無線適合マーク(ELPマーク)」が表示されています。
小電力無線局とは 空中線電力が1W以下で、特定の用途に使用される一定の技術基準が定められた無線局をいいます。例えば、Wi-FiやBluetooth等の小電力データ通信システムの無線局等がこれにあたります。これらには、無線局免許や無線従事者資格が不要ですが、「技適マーク」がついている、技術基準適合証明等を受けた無線設備である必要があります。
輸入品など、海外で使用されるものには、技適マークがついていないものがあり、そのような無線機を使用すると、電波法違反となる恐れがあります。また、無線機を改造すると、技適マークは抹消しなければなりません。
ドローンを利用して、道路上空から撮影を行うだけであれば、道路使用許可は必要ありませんが、ドローンを利用することで、道路における危険を生じさせ、交通の円滑を阻害する恐れがある場合、または道路に人が集まり、一般交通に著しい影響を及ぼす場合には、道路使用許可が必要となります。
「道路における危険の防止及び交通の安全と円滑の確保」のため、規制されています。(根拠法:道路交通法 77条1項)
道路使用許可の申請手続きは、道路使用許可を受けようとする道路の場所を管轄する警察署に「道路使用許可等申請書」および「道路使用の場所・方法等を明らかにした図面等」を提出する必要があります。手数料は2,000~3,000円程度であり、申請先の警察署により異なります。
道路交通法における「道路」には、車道のみならず歩道も含まれます。なお、ドローンと自動車との距離が30m未満となる場合には、国土交通大臣の承認も必要です。
ドローンによる撮影および撮影映像を、インターネット上で公開することについての考え方を整理し、注意事項をまとめたガイドラインが、総務省より公表されています。(「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン )こちらのガイドラインには、被撮影者のプライバシー権・肖像権・個人情報保護法との関係についての考え方が明示されています。
例えば、ドローンによる撮影映像の中に、個人の容貌や住居の表札や車のナンバープレート、および屋内外の様子(洗濯物など、生活状況が推測できるようなものも含む)が映り込んでしまった場合、プライバシー権の保護対象となる可能性があります。
また、例えば撮影自体は防犯等、公益性のある目的であったとしても、その映像を公開することが、肖像権の侵害対象となる場合があります。
ドローンによる撮影映像等に個人情報が含まれ、その個人情報がデータベース化されている場合、個人情報取扱事業者は、安全管理措置(個人情報保護法 第20条)等を講じることが必要となるほか、個人情報取扱事業者が当該データを本人の同意なく公開した場合には、第三者提供の制限(同法第23条)の違反となる場合があります。
なお、個人情報保護法の対象となる「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業活動に利用する事業者であり、一般私人が趣味で撮影するケース等は、同法の対象とはなりません。
条例による規制が及ぶ場合は、国土交通大臣の許可・承認を受けていても、ドローンの飛行が制約される場合がありますので、注意する必要があります。条例による規制は、自治体ごとに異なりますので、常に最新の規制状況を確認するように心がけましょう。
公の施設(公園・庁舎など)の管理に関する事項(地方自治法第244条の2 第1項)に限らず、地方自治法第2条第2項の及ぶ範囲については、法律の範囲内で、条例による規制が及びます。(地方自治法第14条 第1項)
※例えば「東京都立公園条例」「愛知県都市公園条例」等がこれにあたります。詳細は「無人航空機の飛行を制限する条例等」を参照ください。
航空法では、機体本体とバッテリーの重量合わせて200g未満の重量のものは、規制の対象外となってはいますが、航空機の飛行に影響を及ぼす恐れのある行為を禁止した「航空法 第134条の3第1項・第2項」の規制は及びます。
また、公園や公共施設でのドローン飛行は、条例により規制されることがある等、航空法以外のドローンに関わる法律については、200g未満か否かというドローンの重量に関わらず規制の対象となるため、注意が必要です。
航空法以外の法律もチェックし、飛行させる場所の条例をよく確認し、もし条例がない場合は、役場の公園緑地課に問合せをして、規制状況を確認し、万全を期してドローンを飛ばすようにしましょう。
なお、飛行禁止区域や、ルールについての情報はドローンメーカー最大手であるDJIの「安全飛行」ページでも確認することができます。
2020年12月に、国土交通省がドローンの規制強化に向け、規制対象となる機体の重量の基準を、現在の「200g以上」から「100g」以上に変更することを検討している、という「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」という資料が、国土交通省航空局より公開されました。
国土交通省の安全企画課は「この5年でドローンの飛行性能が上がり、200g未満の機体でも、ぶつかると危ない状態になっている」ため、規制強化の検討を始めたとされており、これまでも官民で開く協議会では規制強化が求められており、成立すれば2022年に施行する可能性が高いとされています。
具体的な施行年月日はまだ発表されておりませんので、引き続き続報を待ちましょう。
「DJI CAMP」は、「無人航空機の講習団体及び管理団体一覧」に掲載されている、国土交通省認定の管理団体であり、世界最大手のドローンメーカーであるDJIの日本法人 DJI JAPAN株式会社が主催する、ドローンの民間資格ですが、このDJI CAMPで技能認定に合格し、DJI CAMPスペシャリストとして認定された場合、国土交通省へ無人航空機に係る飛行許可申請を行う際、無人航空機の操縦の知識や能力に関する確認を簡略化することができます。更に、保険料が割引になったり、コミュニティへの参加ができたり等、資格を取得することによるメリットは、仕事獲得に繋がるビジネスシーンでの効力を発揮することにとどまりません。
▼「DJI CAMP」資格取得メリット
さらに、既にDJI CAMPをお持ちの方も、新規取得の方も受講可能な、下記2つのオプション講座を受講することで、さらに飛行申請が簡単になります。(下記オプション講座は2つ同時にでも、片方ずつでも、受講可能です。)
「夜間飛行・目視外飛行講座」は、学科2時間・実技30分で「夜間・目視外・物件投下 飛行テキスト」を用いて講習が行われます。夜景撮影や、日の出前農薬散布作業等には、夜間飛行の技能認証の必要性が求められています。また、目視外飛行は、測量や点検等、広範囲自動飛行の際に技能認証の必要性が求められています。
▼こんな活用シーンが想定される方におすすめ
「危険物輸送・物件投下講座」は、学科・実技ともに1時間30分ずつ「夜間・目視外・物件投下 飛行テキスト」を用いて講習が行われます。農薬散布を行う際、危険物輸送飛行の技能認証が求められています。また、物件投下は、農薬散布の他、救難救助を行う際や、イベントで物件を投下する際などでも、技能認証が求められることがあります。
▼こんな活用シーンが想定される方におすすめ
「DJI CAMP」についての詳細ページ、およびお問合せページも、ぜひ参考にしてみてください。
原則として、許可又は承認を得ることなく「ドローン」を飛ばすことは禁止されています。無人航空機を飛行させる場合には、次に掲げる「飛行の方法」により飛行させなければならず、これらの方法によらない場合は、国土交通大臣の承認が必要です。
【飛行の方法】
なお、飛行の申請許可を行う場合の詳細は、国土交通省のHP「許可・承認手続きについて」をご参照ください。許可が下りるまでには、10日以上かかるので、早めの申請を行うようにしましょう。
上記に違反して、無人航空機を飛行させた者は、50万円以下の罰金に処せられます。(「飲酒時の飛行の禁止」については、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。)
知らないうちに違反をしていた……なんて事にならないように、ドローンを飛行させる前には、航空法やその他規制に関する法律を、しっかりと確認しておきましょう。
本記事で提供する情報等に関しては、上記参考文献を参考に執筆(2020年12月18日現在)したものであり、万全を期してはいますが、その内容の全てを保証するものではございません。情報の提供のみを目的としておりますので、本記事の情報を使用し何らかの損害を被った場合、弊社としては一切責任を負いかねますので、ドローンの飛行にあたっては、最新の規制や法律の確認を必ずご自身で行い、安全飛行に努めて頂きますよう宜しくお願い致します。
また、万が一の事故に備えて、ドローン保険の加入をお勧めします。DJI製のドローンの購入特典として、初年度無料で加入可能な「DJI 無償付帯賠償責任保険」は、登録が必要ですので、必ず登録しましょう。より手厚い補償として最大10億円まで補償される「賠償責任保険」や、高額な機体の修理費や盗難にも備える「機体保険」も是非ご検討ください。
カテゴリー